 配属当初4ヵ月間は、設計から工務・調達・製造・検査・サービス・営業に至るまでのさまざまな現場を、ローテーションでまわる研修を受けました。行く先々で歓迎会をしていただいてうれしかったし、現場の方々と顔見知りになれたので、その後の大きな財産になったと思います。
今は製品開発の計画と設計を行っていますが、その財産の重要性を知ったのは、エアコンのコンプレッサ取り付けの計画設計をしていたときのこと。購入品を組み合わせてつくるものだったにもかかわらず、現物をしっかり確認していなかったため、コンプレッサに出っ張りがあることを知らず、組み立ての段階になってブラケットが付けられない事態に陥ってしまいました。けれど、現場の方が「しょうがないな、加工してやるわ」とおっしゃってくれて、何とか危機を乗り越えることができたんです。あのときはホントにありがたかったです。わずかな期間でも最初に現場を体験して、実際に現場の方々と顔見知りになっていたことが、ああいう形で役立つとは思わなかったですね。助けていただいた分、自分も誠心誠意、仕事をしていこうと改めて思いました。
学生時代の研究は個人プレーでしかなかったけれど、会社に入るとチームプレーになります。自分の計画や設計を自分ひとりで実現することはできず、多くの方々の協力があってこそ、初めて形になりますから、現場に限らず、開発設計の技術者同士、あるいは調達の方々など、関係者とのコミュニケーションはとても重要です。

計画段階から初めて携わったのは、米国向けの巨大な杭打機のパワーユニットでした。まずエンジンの打合せに参加したら、グループ長からいきなり「じゃあ、エンジンパーツをこのパーツリストから決めて」と言われ、驚きました。早速、パーツリストを調べましたが、海外メーカーなのでリストはすべて英語です。専門用語もあり、下調べをしてもわからない部分が続出でした。それなのに、そのときは先輩や上司に何をどう相談すればよいかもわからなくて、パニックに近い状況でしたね(笑)。でも、どうしようもなくてグループ長、思い切って相談したんです。そうしたら、親切にいろいろ教えてくださって、正直なところ、エンジンパーツはほとんどグループ長に選んでいただいたようなものです(笑)。いくら頑張っても、経験も知識も充分でない人間が最初からできることは限られていますね。あの一件で私は自分を知り、聞かなければわからないことは、迷わず相談すべきだと思ったし、設計という仕事がどういうものなのかを学んだ気がします。
建機の開発は設計者全員を集めた全体ミーティングから始まり、そこで要件を共有します。その後、各自が担当部分の開発設計に着手しますが、定期的に全体ミーティングを行い、各自の進行状況と、できている部分を組み合わせて、全体としてうまく機能するかどうかを確認するのです。全員が身近にいる職場なので、日常でもみんなマメに報告・連絡・相談をしますが、そうした連携があってこそ、設計は成り立ちます。まさにチームプレー。教え合い、助け合いの仕事です。

今、担当しているのは拡底バケットの開発です。これは建物の基礎をつくるために、縦孔の先端部を円錐形に拡げる機械ですが、そのため形状は先端部がウイングになっているんです。使い方としては、クレーンに装着して先端のウイングを閉じた状態、つまり筒状にして地下に下ろし、地下で望みの径までウイングを開いて作動させ、ウイングの回転によって土を掘るというものです。さらに掘った土を回収し、地上に上げることもできるので、地下には着実に空間ができていきます。私はこういう機器の存在を知らなかったので、担当になり、実際に物をつくっている協力工場で現物をしっかり見学してきました。ただ、当社としては拡底バケットを随分前から発売しており、昔の図面を見ると手書きのものなのに、ウイングの開閉機構がかなり複雑で「よくここまで開発できたな」と感心します。当社は歴史のある会社なので、社内には技術的な蓄積が豊富にあり、知れば知るほど感動や発見があります。私は運良く3-D
CADが使える時代に生まれたので、そうした先輩がたの優れた開発を参考にして、お客様のご要望に合った拡底バケットを3次元で設計しています。
まだまだ私のできることは限られているので、こうして一つずつ新しい製品やパーツを経験し、できることを広げていきたいと思っています。そして、いつかは製品の一部分の開発ではなく、一つの製品全体を統括するリーダーとして活動できるようになりたいです。
|