
車両検査課の仕事は、その名前の通り、車両を検査する仕事です。具体的には、車両の外観に傷や汚れ等はないか、機械的な不具合はないか、電気的な問題はないかなどを細かくチェックしていきます。実際の検査作業は現場の作業員が行いますので、私はその検査に必要な工程の計画、及び検査要領書を作成し、具体的な作業の指示を出すことが役割です。私が決めた通りに作業員が動くわけですから、指示にミスや曖昧さは許されません。 万が一、不具合が見つかった時には、関係工場、もしくは部品メーカーと協力し、問題解決を行います。また、私たちのお客様である鉄道会社の方も完成状態を確認しに見えますので、その立ち会い検査の対応も業務の一つです。
完成立会検査を完了した車両は、豊川製作所よりお客様の車両基地へ納入されることになりますが、私たちは納入整備作業の責任者となり、現地にてお客様と共に営業運転に投入できる状態に整備します。また、営業運転開始後に発生した不具合の窓口も私たちの役目です。一言で検査といっても対社内だけでなく、このように対社外の仕事もあります。かなり業務の幅が広いことが特徴でしょう。
担当の車種は決まっているわけではないので、扱う車両は多種多様。客車、気動車、電車と、その仕組みは様々です。車種によって取り付く部品や空気などの配管、また電気回路も異なってくるので、検査においても膨大な知識が要求されます。実に奥の深い仕事ですが、それが面白さでもあります。

入社後に車両検査課に配属され、すぐに担当したのがある私鉄の新型車両でした。車体そのものは新型であっても、中の部品はほとんどが数十年前から使われている部品の流用という、通常製作する新製車両とは異なったタイプの車両でした。
そのため、検査のための要領書を作成するにも一苦労。というのも、古い部品については当時の要領書を探し出して集めてくる必要があったからです。社内に残っていた古い資料や現場のベテラン社員の協力などを得て、苦労しつつもなんとか検査要領書を作成することができました。
実際にその要領書に基づいて検査が行われたのですが、トラブルが発生したこともありました。客先や関係部署と協力しながら一つひとつ、そのトラブルを克服し、満足できる形で納品できたときは、大きな達成感がありました。そして実際にその車両が走っている姿を見たときは、何とも言えない大きな感激を味わうことができました。
このケースでもわかるように、我々の仕事には"経験"という要素が重要です。鉄道は経験工学。要領書の作成一つとっても、ベテランが経験してきた数多くの知見は不可欠です。現場のベテラン作業員にも臆することなく教えを請い、その経験を吸収するよう、努めています。

昨年のことですが、米国バージニア州の鉄道会社の仕事を経験しました。当社の製造した車両を、現地の作業員が組み立てるのに際し、その指導のために3カ月間、米国ミルウォーキーに出張したのです。
現地の検査員の為に要領書を作成し、それをもとに、実際に検査を行ってもらいました。日本とは勝手が違い、戸惑うこともありましたが、苦労しながらも検査は一通り終えることができました。学生時代の英語の勉強とは違い、コミュニケーションが中心となる為、その難しさと重要さを改めて痛感しました。
日本車両では米国で新工場を建設する予定であり、これから先、海外で活躍する社員が増えてくることでしょう。技術者として世界を舞台に腕をふるうことができるわけで、とても嬉しく思います。私もその1人として活躍できれば思っているところです。
鉄道は経験工学だと言いましたが、一方で鉄道車両そのものは進化を続けています。機械的なトラブルだけでなく、電気的な要素も複雑にからみあったトラブルが起こる可能性もあります。機械だけ、電気だけという視点ではなくて、総合的に見て対処する力が求められるようになってきているのです。
それだけ検査の仕事は難しくなってきているのですが、どんなトラブルであろうと絶対に解決してみせる、という使命感に変わりはありません。特に営業車両でのトラブルでは、現地に急行して対応に当たることもあります。この列車が動くのを待っているお客さまのことを思うと、1分1秒でも早くトラブルシュートしなければ、という熱い思いにかられます。
私が目標とするのは、検査のエキスパート。一つひとつの経験を大切にし、どんなトラブルにも余裕をもって対処できるような技術者になりたいと思っています。
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