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国内、国外を問わず、作業現場からムダをなくしたい。
2007.Sep

図面を見て問題点が把握できる技術者

 私は製造で電装工場におりますが、ここは簡単に言うと車両の室内や床下への配線、結線を担当する部署です。電気電子は大別すると強電と弱電に分かれ、私はそのうちの強電、パワーエレクトロニクスを学生時代に勉強してきたのですが、それだけの知識では仕事は何ともなりません。例えば、電車の図面には車体図と艤装図、配線図の3種類がありますが、電装工場では主にそのうちの艤装図と配線図を見て、電車の配線を行います。実はこれがクセモノで、入社当初は当然の如く図面が全く読めませんでした。構造を表す車体図は読みやすいのですが、配線に必要な艤装図と配線図は知っている人しか読めない。特に配線図は何が描いてあるのかさえ、わからなかったです。先輩に見方を教えてもらい、実際に電車を見てまわり、何がどこに付くのかを実物を見て理解しながら、見方を学びました。
 最初に担当した車両は私鉄の通勤車両でしたが、そのときは図面に対してはまだそんな調子でしたので仕事どころではなく、やっと読めるようになったのはその次のロットの車両のとき。1年後に最初に担当した車両を再度担当したときは、さすがに図面も、構造も、すぐにわかってよかったです(笑)。電気の図面を読むには、実物を知る経験が必要ですね。
 自分の配属が製造だと知ったときは、自分で電車をつくるのかと思いました。けれど、実作業は現場の方々が行い、私たちが行うのは裏方の仕事です。いかにつくりやすい環境を創出し、作業性を高めるか。作業効率や作業品質を高める方策を考え、実施するのが、製造の仕事です。それを行うには、図面を読むことが不可欠で、図面を見て作業上の問題点がわかるようになった今、やっと技術者になれたのだと思います。

アメリカで作業指示を出す難しさ

 昨年、半年間アメリカの最終組立工場へ行っていました。言葉が充分に伝わらない異国で、現場の作業者に指示を出し、それを実現する作業をやってもらうのは難しい。私自身、渡米前には大学受験のときの「でる単」みたいな単語帳を見たり、TOEICの問題集で勉強をしたりしましたが、それが役立ったかどうかはよくわかりません(笑)。というのは、実際に行ってみると工場の作業者は移民が多く、スペイン語しか話せない人など、英語のコミュニケーションが苦手な人が多数いたのです。そのため、まず自分から話しかけることが大切でした。そのうえで、自分の意図を明確に伝えるために身振り手振りを交えたり、相手の意図を理解するためによく聞き、よく見て、初めてコミュニケーションを図ることができます。最初の2〜3週間はキツく、正直なところ、帰りたいと思いましたが、1ヵ月くらい経つと「どうにかなるかな」と思い始めました。結局、受け身ではダメなんです。わからなくても自分から話し、理解しようとすれば、相手も真剣であることを察してくれるし、日本人にはゆっくり話してくれる。アメリカでは実際に自分がやって見せて、現場の人たちに理解を求めました。日本の作業者はベテランの方々が中心ですが、アメリカでは作業に慣れていない方ばかりです。そういう意味でも、相手に合わせたコミュニケーションが必要ですね。何よりも大事な事は、日頃からまめに製造現場に足を運んで自分からコミュニケーションをとっていくことだと思います。

利益が上がるしくみをつくるために

 製造は進行中の現場の作業者だけでなく、その前後の工程の現場の方々と話して進行状況を把握したり、あるいは設計の担当者と話して作業ポイントを把握しておく必要があります。図面さえ読めれば、それで何とかなるものではなく、製品づくりにかかわる関係者と実際に話して情報を仕入れ、自分なりに理解、分析して、やっとより良い生産体制を考えられるようになります。今は主に副資材(電車を組み立てる為に必要な材料)の手配を行う中で、在庫量、使用数量、手配数量などのデータを取り、ムダが発生しないよう心がけていますが、そうした数値管理と現場の作業状況が有機的に結びついてこそ、実効性のある改善が可能になると思うので、国内、国外を問わず、モノづくりの現場でのコミュニケーションを大切にしながら、ムダをなくしていきたいと思います。それができてこそ、利益の上がる製造のしくみつくることが可能になるんじゃないでしょうか。
 現場で作業の様子を見ていると、もっと作業しやすくなるように治具をつくろうと思ったり、作業場の配置を変えようと思ったりします。机に向かっているだけでは何も浮かびませんが、現場に行けばさまざまなアイデアが生まれる。今年はまた3ヵ月間アメリカへ行くので、積極的に現場のバックアップに挑戦したいと思います。

 

【辻 正章 Masaaki Tsuji】
現場へ行くと、電車が完成していく過程を間近で見られるのが面白く、作業過程を見ているだけで思わずワクワクする。現場を楽しめるそんな自分の資質を、今後は国内外の仕事に活かしていきたいと思っている。仕事を離れると、一転して寺や城などの写真を撮るのが趣味という純日本人。意外性が高い。

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