
モノづくりの醍醐味は、世界にたった一つだけの製品を自分の手で生み出すことでしょう。そこには、これで終わりというゴールはありません。いったんは納得したとしても、すぐにその先を目指したくなる。その面白みこそ、メーカーで働く一番の喜びです。
私が入社以来担当しているのは、鉄道車両を検査・修繕する設備、いわゆる検修設備です。自動車に12ヵ月点検や車検があるように、鉄道車両にも定期的な検査があります。その際に必要となる設備を開発することが私の仕事です。
例えば自走式昇降装置付き仮台車です。これは鉄道事業者の検修工場内で台車を外し移動できなくなった車体を、各検修作業場へ搬送するもので、作業場にて床下機器などを交換するために車体を上下させる機能を有した専用の台車です。
難しいのは、どの車種にも対応できるようにすることです。東京のある私鉄さんでは様々な車種の車両を所有されており、そのすべてに対応できるようにするのは大変な苦労でした。工場に何度も足を運び、すべての車種の床下機器寸法を自分の手で測り、図面と照合しながら最適な仕様を設計していったのです。
こうしてできあがった仮台車は、世界でたった一つの設備。鉄道利用者の目に触れるわけではありませんが、鉄道車両が安全に走り続けるために不可欠な設備なのです。それを自分の手で生み出したことが、私の誇りです。
ポイントとなるのは、作業に当たる現場の人たちがどのような課題を持っているかということです。例えば屋根がアール状になっているドーム型の新型車両を導入されたお客様の工場では、屋根上を検修する際、安全に屋根に登れないという問題がありました。
そこで私は可倒式の柵を利用して屋根の端に足場をつくる設備を開発。作業者が安全に屋根に登れるようにしました。この時は、車両のどの部分に荷重がかけられるか、また屋根上機器の配置や構造の確認において、車両メーカーならではのノウハウが活かされました。

私が担当してきた設備は鉄道に関わる設備だけではありません。航空機の主翼生産ラインの重要な設備も開発しています。航空機の主翼と同じ大きさの巨大なワークを数ミリ単位の高い精度で水平を保ちながら上下させる設備の開発では、設計から据付までの各ステップにおいて、精度に対する非常に厳しい要求に応えていく苦労がありました。
お客さまのニーズを深掘りして本音を聞き出し、それに応える手段を時には現場で油まみれになりながら考えていきます。非常に困難な要求が出ることもありますが、そうした難題を何とかクリアーして、最終的に世界にたった一つだけの設備を生み出し、それによって世の中の多くの人々に関わっているという実感が、エンジニアとしての最高の喜びです。

モノづくりというと自動車産業が代表的ですが、私は個人の乗り物よりも公共の乗物の方に興味があったので、鉄道の世界を選びました。
よく経験工学と言われる鉄道の世界ですが、経験のもとに絶え間ないイノベーションが行われています。その最先端の鉄道の世界で、新しい様々な機械設備を私の手で開発し、世界中の多くの人々に関わっていくことが私の夢です。
また、鉄道に限らず、先ほどの航空機やその他の新しい分野にもこれまでの経験を活かして挑戦できたらと思っています。
モノづくりの仕事には大きな喜びがあります。そして、ゴールはありません。これからも私は世界でたった一つのモノづくりにこだわり続けていきたいと思います。

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