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菅野:学生時代、東京で満員電車に乗ると、夏場は蒸し暑く汗だくになったり、冬場は暖房が過剰だったりと、よく車内の温度が気になりました。満員の状態で長時間乗っている人が多いので、快適であってほしいと思っていたのですが。そこで、採用面接で私は「電車の快適性を向上させる仕事がしたい」と言ったのです。そうしたら希望通り、鉄道車両の空調の開発に携わることができ、喜んでいます。始まったばかりなので、今は現状の空調の改善点を見つけるために、データ集めをしています。先日、納車前の車両の試運転に添乗させてもらい、空調を作動させて車内各所の温度を計測しました。
林:新型車両の試運転に乗ってデータ収集ができたのは幸運だったね。私は、鉄道車両の衝突安全性を高める開発を行っています。鉄道の安全は、1つは事故を防ぐことによって、もう1つは事故が起きたときの安全性確保によって高められます。これまで、日本は事故の防止をメインに力を入れ、逆に欧米では衝突時の安全性確保のための車体の強化に力を入れてきました。最終的にはどちらの視点も必要だとは思いますが。海外へ輸出も行っている鉄道車両メーカーとして、衝突対策構造の開発はとても重要なテーマです。現在の狙いは、衝突エネルギーを車両自体が効率よく吸収すること。これができれば、乗客の安全性は飛躍的に高まります。
菅野:衝撃吸収ボディですか。自動車のような発想ですね。
林:そう。快適性や安全性の他にも、鉄道車両の付加価値を高めるためにできることはたくさんあります。例えば、省エネのための軽量化であるとか、完成車両の外観を良くする製作方法であるとか。これらの要素技術の開発においては、試験や試作だけでなく、計算機による数値シミュレーションが必須です。この部署には、構造解析や流体解析など、各種の数値解析を行うシステムが整備されており、メンバーはそれらを活用して開発に励んでいます。
菅野:一人ひとりが自分の研究テーマを持ち、コンピュータによる解析を駆使して開発を行っていく要素技術グループは、大学の研究室みたいな雰囲気だと思います。


林:要素技術の開発は、要素だけの開発で終わるのではなく、それを実際の製品に適用するところまで考えなければなりません。そのためにもシミュレーションは欠かせませんし、知識や創造力も求められます。
菅野:どんなに良い結果が想定できても、コスト的に実現不可能なこともありますよね?
林:そうだね。どんな技術も最終的には製品化することが目標であり、会社の売上に貢献する結果を出すことを期待されています。けれど私たちの部署は、設計部や製造部などと比べると納期や顧客の要求が厳然と示されている訳ではないので、自分で目標と計画を立て、自主的に仕事を進めていかなければなりません。それは言いかえれば、タイトなスケジュールに縛られず、納得のいくまで考えて仕事を進められるということでもあります。
菅野:学生時代は課題やアイデアを先生から与えられて研究していましたが、会社に入ると自分で課題を見つけ、アイデアを出すことを求められます。そのためには、まずは鉄道のしくみや車両の構造等、知識を身につけることが必要ですね。
林:自分の場合を振り返ってみると、最初の1年間は先輩の研究の手伝いを通して、問題の把握や情報収集、解決方法の考案、計算モデルの作成、解析と検証を繰り返して成果を形にするところまで、一連の流れを経験し身につけさせてもらいました。菅野くんも、まずは基礎固めとして、自分に必要な知識や手法を身につけていって欲しいと思います。

菅野:いま私はその一連の流れのうち、データの計測・収集、分析および報告書への集約をしている段階ですが、先日、上司から報告書を読みやすく簡潔に書くように指摘されました。学生時代のレポートは、多くの内容を詰め込んで枚数を書くことが重要だと思っていましたが、仕事になると「要点を1枚にまとめろ」と言われます(笑)。
林:報告書は、研究や開発の成果を上司に伝え、理解してもらうことが目的だから、長々と書いても要点がわかりづらい資料では意味がないね。一方で報告書以外にも、社内の技術研究発表会でアピールしたり、社外での学会発表や特許取得に挑む等、いろんな成果の出し方があって励みになります。
菅野:そうですね。1日も早く結果を出して、会社の財産になる仕事をしたいです。
林:意気込みは良いけど、焦る必要はないよ。基礎をなおざりにして成果を出すことばかりに目を奪われると、結局は目先の見栄えにとらわれて、実のある開発からは縁遠くなってしまうので。
菅野:はい。まずは部署内の新人向けの勉強会や日頃の先輩のアドバイスをもとに、力をつけていきたいです。先輩たちは皆、すごい知識を持っているので、勉強の必要性をヒシヒシと感じます。
林:そういう意味では、今は先輩から与えられた仕事に真摯に取り組んでいけば、多くのことを学べるし、やりたいことも広がってくると思います。
菅野:今の鉄道車両の空調に関する取り組みで、快適性を実現するアイデアを見つけることができたら、別のことにも積極的に取り組みたいと思っています。さらに将来は、現在の電車の仕組みとは違ったものを創りたいです。
林:既存の概念にとらわれない、新しいものを創りあげていけるといいね。会社としても、私個人としても、菅野くんには期待しています。
菅野:ただ、今は一日の終りに「今日はこれだけやった」という達成感を持てるようになることが目標ですが(笑)。
林:何事も毎日の積み重ねだから、焦らず、しっかり頑張っていきましょう

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