未来をつくる
建設現場の未来を拓く、無線操作杭打機。
日本車両が守り続ける「信頼」と「変革」が凝縮されています。
PROJECT MEMBER
建設機械本部
技術部 制御グループ
建設機械本部
技術部 制御グループ
建設機械本部
営業総括部 営業管理グループ
建設機械本部
品質保証部 品質保証グループ
2024年9月。建設現場の風景を変えた、新型「無線操作杭打機(ラジコン操作機)」が納車されました。これまで建設機械の世界では、オペレーターが運転席に座り、物理的なレバーで操作するのが当たり前でした。しかし、現場から上がっていたのは「もっと安全に、もっと少人数で」という切実な声。その課題に挑んだのが、建設機械本部の精鋭たちです。
そこには、杭打機の無線操作化という未知の領域へ踏み出す、若きエンジニアたちの情熱がありました。
物理レバーから電子制御へ。
「省人化」を実現する新世代のメカニズム。
従来の杭打機は、運転席にある物理的なレバーで油圧機器を直接駆動させる、いわば「アナログ」な機械でした。しかし、無線操作を実現するためには、すべての動作を電気信号でコントロールする「電子制御化」が不可欠です。本プロジェクトでは、運転席のレバーを廃止し、ハードウェア構成をゼロから刷新。これにより、オペレーターが機体の外からラジコン感覚で操作できる「無線操作杭打機」が誕生しました。
この進化がもたらす最大のメリットは、圧倒的な「省人化」と「安全性の向上」です。従来、杭打機の移動や作業には、運転員と周囲の安全を確認する合図者の計2名が必要でした。しかし、無線操作が可能になったことで、運転員自らが安全な場所から周囲を見渡して操作できるため、1名での作業が可能に。人手不足に悩む顧客にとって、これ以上ないソリューションを提供したのです。さらに、操作データをクラウドにアップロードする「データ収集システム」も構築。将来の自動運転やAI活用、SaaSビジネスを見据えた、まさに「令和型」のデジタル基盤が整いました。
鉄道車両本部のDNAを建設機械本部に移植。
部署の垣根を越えた技術が、突破口を開きました。
無線操作を実現させるために、日本車両が注力したのはソフトウェアの品質向上でした。しかし、従来の建設機械開発の枠組みでは、目に見えない「プログラムの不具合」の特定に苦慮し、プロジェクトは一時困難に直面しました。物理レバーを廃した完全無線・コンピュータ制御への移行は、設計の比重を「ハード(機械)」から「ソフト(制御)」へシフトする必要があります。「動かない原因がプログラムなのか、電気なのか、油圧なのか……」F・Sを中心とした設計チームは、ブラックボックス化したシステムを前に立ち尽くしました。
そこで立ち上がったのが、当時鉄道車両本部に所属していたプログラマーのR・Fです。「建設機械本部が大変なら助けに行こう」と、部署の垣根を越えた助っ人として参画することに。鉄道車両の車載制御装置開発で培ってきた知識とノウハウを用いてプログラミングを担当しました。R・Fが作った無線を用いた情報の入力・出力プログラムを受けて、F・Sが機械を動かすハードの動きに落とし込みます。試行錯誤を繰り返し、エンジニア同士が協力しながら形にしていきました。
鉄道車両では当たり前だった「内部信号のモニタリング」や「模擬環境での事前検証」も、今回の建設機械開発に導入。これにより、目に見えない電気信号を可視化し、実機が完成する前に仮想環境で不具合を潰すことが可能になりました。鉄道車両開発で培われた緻密な検証ノウハウが、建設機械という異なるフィールドで化学反応を起こし、開発効率と品質を劇的に引き上げました。
現場の声に耳を傾け、お客様のニーズを起点とした製品開発。
納品翌日のトラブルさえも「信頼」に変えた対応力。
今回のプロジェクトは、顧客の要望を起点として発足しました。「自走できない機械を自走させたい」「手元のモニタで施工情報を見たい」。営業のM・Kが顧客のニーズを拾い、社内に展開しながら調整を行い、チームのメンバー一人ひとりが全力で自分の役割を果たしながら、形にしていきました。
その中で、このプロジェクトの肝として、制御プログラムの「完全内製化」があります。通常、複雑なプログラムは外注されることが多い中、日本車両は自社での開発にこだわりました。その真価が問われたのは、納品後の試運転時のことです。
「現場で機械の動作不良が発生した」——。納品翌日、現場から緊急の連絡が入りました。本来なら数週間の停止を余儀なくされる事態ですが、社内のエンジニアがすぐに駆けつけ、その場でプログラムを書き換え、即座に問題を解決しました。この圧倒的なレスポンスに、顧客からは驚きと称賛の声が上がりました。お客様からもレスポンスの速さを評価いただき、この迅速な対応こそが、顧客と共に製品を作り上げるという日本車両の姿勢を証明し、深い信頼関係を築く決定打になったと考えます。
品質保証でも次世代のスタンダードを構築。
デジタル技術で「クレームゼロ」を実現し信頼を守ります。
無線操作杭打機は、中身が完全にブラックボックス化された精密機械です。そのため、品質保証のあり方も見直す必要がありました。検査を担当したK・Sは、膨大な動作パターンをすべて網羅する「全数確認」と、実機では再現が難しい「信頼性試験」を、前述の検証環境を用いて徹底的に実施しました。
このデジタル化された検査体制は、劇的な成果をもたらしました。従来、ソフトウェアの検証には4名の人員が必要でしたが、わずか2名での運用が可能に。さらに、徹底した事前検証の結果、本開発機は納品後、現在に至るまで製品自体のクレームはゼロ。高い品質を維持しながら開発効率を上げるという、日本車両の新たな「品質管理モデル」を確立しました。
一人ひとりの挑戦が、日本の土台を支えています。
品質へのこだわりとデジタル・トランスフォーメーション。
チームのメンバーは「仲間と連携し、一つひとつの課題をゲームのクエストを攻略するように楽しんで乗り越えられたことが、この結果に繋がった」と振り返ります。このプロジェクトがスタートしたのは2020年。そこには、創業以来続く「安全・安心」と品質へのこだわりと、時代に合わせた「変革」への意志がありました。今回の開発で得られた電子制御やプログラム内製化のノウハウは、今後、杭打機の標準機種にも展開される予定です。
日本車両のものづくりは、一人ひとりの主体性が部署の力になり、それが会社全体の信頼へと繋がっています。今回のプロジェクトでも、営業・プログラマー・設計・製造・検査の各部署が緊密に連携し、職位や部門の壁を越えて意見を出し合うことで、不可能だと思われたタイトな納期と技術的課題を突破しました。
デジタル技術をその身に宿した杭打機は、今日も全国の建設現場で、安全に、そして効率的に日本の土台を作っています。私たちはこれからも、伝統の技術にデジタルという新たな翼を授け、社会のニーズに応え続けます。一人ひとりの力を結集し、最高品質のものづくりで社会に貢献していきます。