鉄道車両トピックス
2017.3
日本初の地下鉄車両1001号車(写真提供:東京メトロ殿)
2017年3月10日、当社が90年前に東京地下鉄道(現:東京メトロ)殿に納入した「日本初の地下鉄車両1001号車」が、国の重要文化財として指定される運びとなりました。鉄道用電気車両(電車)としては、初の重要文化財への指定であり、大変名誉なことです。
選定の理由は、文化庁より大きく2点挙げられています。
選定理由の1点目は、「1927年、東洋初の地下鉄とし上野〜浅草間2.2km を走行した車両」であり、また「その後約40 年間、一貫して営団地下鉄(現:東京メトロ)殿で活躍」したことです。当社の社史「幕進100年」を紐解くと、当社がこの東洋初の地下鉄を製造するに至った背景を垣間見ることができます。1925年12月、東京地下鉄道より地下鉄車両製造の見積照会がありました。入札に当たっては「全鋼製(要不燃性)」が条件でしたが、当社は当時より鋼製車両の開発および最大生産実績を誇っており、国内、海外の各メーカーと競合する中、「初の地下鉄車両10両の注文の全て」を受注することに成功しました。これはまさに当社の技術力を世界に示す快挙でした。
選定理由の2点目は、「全鋼製、自動扉、自動列車停止装置の採用などの防災・安全対策や、内装、照明、吊り手等の乗客向けの設備に地下鉄ゆえの特徴」を有し、「後の地下鉄車両の規範となった車両であり、鉄道史、交通史上に重要」であったことです。まず地下鉄製造に当たっては前述のとおり「全鋼製」の条件のもと、車体の難燃化を図るため、当時主流であった木製車両ではなく、鋼鉄が使用されました。また日本初の「自動列車停止装置」により安全性向上が図られ、当時では珍しい「ドアエンジン」(当時鉄道省で試験されていた国産の自動戸閉装置)で全扉の開閉が自動化されています。さらに吊手は「リコ式」(使用しないときは、ばねで跳ね上がり、走行中に左右に揺れない構造)、客室灯はおしゃれな「間接照明」(地下空間という環境から直接光が入っても眩しくなく、影が出来ない)が採用されるなど、当時の最先端の技術が評価された形となります。
![]() 1001号車 車両内観 |
![]() リコ式吊手と間接照明 |
![]() 予備灯とドア開閉スイッチ |
当社の技術力と歴史が詰まった本車両は、現在、地下鉄博物館(東京都江戸川区)に所蔵されています。皆さんも東京に行かれる機会があれば、ぜひ先人達の技術が詰まった、こちらの重要文化財をじっくりと鑑賞してみてはいかがでしょうか。
東京地下鉄道殿社紋
(写真提供:東京メトロ殿)
東京地下鉄(株)殿向け銀座線用1000系4次車(特別仕様車)